ビール造り
ある日の会社での英会話。
俺「前から自炊してたけど、最近は発酵とか使うようになって、イースト菌でピザとか作りますよ」
外人「ビールは作らないのか、キットで簡単に作れるし、こっちの国ではポピュラーだったぞ。そして何より経済的で、ビール買うより安い」
俺「何それ気になる。でも日本でも売ってるんですかね。違法なんじゃないですか?」
外人「日本でも売ってると思うよ。蒸留酒じゃないから大丈夫。」
気になりますよね。
簡単・安いとなれば、調べてみるわけです。
調べると、出てくる出てくる。
やれ「簡単」、「自分で作ったものの方がうまい」、「ビール1本40円ぐらいに」、「美味しくて外では飲めなくなる」、「地ビールみたいな味」、「カスタマイズが奥深い」etc…
ふーん。
ホームブルーイングね、立派な趣味じゃんね。
楽しそう。
とりあえず、買ってみたよね。
ポチッとね。
3日ぐらいで、でかい箱が2つ届きました。
一つはポリタンクとかの醸造セット。
22Lタンクだから、でかいです。
そしてもう一つは小びん70本。
小瓶70本て…結構場所食いますね(笑)
少し妻に邪魔がられています。
丁寧に書かれた説明書を読むと…んん?
「日本では1%以上のアルコールを作ることは禁止されています。下記のレシピは5倍以上に薄めて作ってください」
おいおい、話がちげーよ(笑)
でもまあその辺は、みんな自己責任とかそんな感じなんでしょうね。
そして届いた日、早速作ってみました。
今回作るのは、日本で最も飲まれているラガースタイルのビールです。
少なくとも日本では一番「普通」なビールなんですね。
~ここからちょっとうんちくタイム~
ビールを作るにあたって、ビールのことをいろいろ調べました。
ビールは世界に数百にもわたるスタイルがあると言われていますが、大きく2つに分けられます。
それは、下面発酵(ラガー)か、上面発酵(エール)の2タイプです。
単純に、発酵した後に酵母が沈むやつと浮くやつの違いだそうです。
ラガータイプは、低温でじっくりと醸造させるタイプで、品質が安定しており大規模製造に向いている。すっきりとした味わいが多い。
エールタイプは、高温で短時間に醸造させるタイプで、古くからあるスタイル。華やかな香りが特徴。
ラガーの中でも特にすっきりとしたピルスナータイプのビールが日本ではほとんどを占めています。よくのむのは全部それ。
というのも、どうやら法規制が原因っぽいですね。
日本では醸造するのに許可が必要ですが、ビールの場合年間6万リットル以上作る人じゃないと許可が下りない。
ということで、大規模に、そして工業的に安定して作られるラガータイプが主流になった、ということみたいです。
それでも年間6万リットルというのは、ちょっと昔に規制緩和された数字だそうで、それによって日本では地ビールブームが起き、地ビールではエールタイプも多くみられるということです。
エールタイプで一番有名なのは、長野のヤッホーブルーイングが出している、「よなよなエール」じゃないでしょうか。
ホップの柑橘系のような香りが、普通のビールにはない華やかさを出してくれますよね。
~閑話休題~
作ってみましたが、実際簡単でした。
一番重要なのは、殺菌だそうです。
使うもの、触るもの全てに雑菌がつかないようにするのが最重要だそうで。
発酵器具や瓶の中はもちろん、お玉とか鍋とか、とりあえず全部除菌用アルコールスプレーをシュッシュしながら作業しました。
まずは缶に入ったモルトエキス(水あめみたいなの)を、鍋に沸かしたお湯に溶かして冷まします。
こんなのね。別にビールのにおいはしないけど、甘いようなにおいがします。
で、これを3Lぐらいのお湯で解いたら人肌?近くまで下がるまで冷やす。鍋を氷水に冷やして、氷を足しながら1時間ぐらいで一気に冷まします。
ちなみに、早く冷やせば冷やすほどおいしくなるみたいです。
これがビールの素でウォートと呼ばれるそう。
これをポリタンクに入れて、20Lぐらいまで水を足して薄めます。
どこまで入れたらいいかわからんかったから適当に水入れたけど、本当はちゃんと決められた量の方がいいっぽい…
そして、この水も天然水とかブリタとか、おいしい系の水がいいらしいけど、それもめんどうなのでダイレクト水道水。
で、一応ついてきた比重計(ガラス管浮かべるやつね)で比重を測定します。
比重計には「ビールにする前」「発酵した後」の線がついていて、ガラス管を浮かべた時にどこまで浮くかで判断します。
あれ、ちょっと薄い…?
まあいいか。
そこから、瓶についてきたふりかけみたいな袋(ビール酵母)を振り入れます。
この時に40℃以上だと酵母が死んじゃうみたいですね。
で、蓋をしてエアロックを付けて放置、と。
エアロックとは、中のガスは抜けるけど外の空気が入ってこないようにする弁です。
このとき水温28℃(タンクに温度計シール貼ってる)。
説明書には「20~28℃で2~10日間発酵させます(温度によって時間が変わります)」「発酵が終了してから1日以上待ちます」と書いてある。
夜キットを受け取って仕込み、翌朝にはもうガンガン発酵しているじゃありませんか。
エアロックが、「ポコ…ポコ…ポコ…」と頻繁に音を立てていて、二酸化炭素が発生しているのを感じます。
そして、エアロックに顔を近づけると、ビールのにおいがプンプン来るじゃねーか!
その翌日、発酵が終わっている?
あれ、もう全くボコボコ言ってない…
28℃だから、2日で終わったのか?早すぎない?
そして、あることに気づいてしまった。
「明日から一週間出張だわ。」
①ちょっと早いと思うけど、もう瓶詰めしちゃう。発酵終わっておいて置きすぎると雑味が増えるらしいし、室温も28℃と高いし余計ね。
②いやいや、まだ発酵は終わったばかり、温度が低い場合は終わってから1週間おくのも普通。そもそも時間が短すぎるのでは。帰ってきてから再確認。
…。
うーん、我慢できないっ!
気が急いたとは思いましたが、もう瓶詰めすることに。
発酵した容器をあけてみると、立派なビールのにおい。
液面に泡がなくなると発酵が終わっている証とのことですが、泡もなくなっており発酵は終わっているように見えます。
瓶詰めするときは、プライミングシュガーといって糖分を追加します。
瓶の中で追加発酵させ、発生した二酸化炭素を瓶の中で閉じ込めて炭酸を作るためです。
出来上がったビールを1L程鍋にとり、火にかけて砂糖を溶かします。溶けたらポリタンクに戻して混ぜる。
でもって、これを瓶詰めしていきます!
瓶に一本ずつ入れたら、打栓機(これもキットについてた)で王冠を付けていきます。
できた…
小びん62本+ペットボトル1本分です。
ペットボトルは、熟成確認用だそうです。
二酸化炭素が十分に発生し、炭酸ができてペットボトルがカチカチになれば、炭酸ができている証だそうです。
ちなみに、そこから2か月以上熟成させて、ようやくおいしくなるそうで。
というところまできて、月曜日出張に行きました。
そして、金曜日帰ってくると…
ペットボトルがカチカチじゃあ~~!
2か月、最低でも2週間待たないとおいしくないそうです。
…。
うーん、我慢できないっ!
気が急いたとは思いましたが、もう瓶を開けてみることに。
美味しそうなビールじゃないか!
瓶の下の方には酵母が溜まっていますが、上手にグラスに注げば透き通ったビールが出てきます。
ごくごく。
んー、ちょっと薄い…?ような?
薄く作りすぎたのか?
まだ熟成が足りないのか?
これから、2か月、半年、1年と、どんどん味が変化しておいしくなっていくそうです。
楽しみではあるが、1年後にはもう残ってない気がする(笑)
それよりも、早く次のビールを作ってみたい。
ビールのキットだけで数十種類あるんですよ。
そこからさらに、ホップとか酵母とか麦芽とか、別に調達してカスタムして自分だけのビールを作っていくそうです。
やっぱりつぎはエールビールが飲みたいな。
そのうちヒューガルデンホワイトみたいなベルジャンスタイルの白ビールも作りたいな。
あぁ~、色々飲んでみたいんじゃあ~