ピッコロトランペット購入記3 ~演奏編~
前回の続き。
さあ、楽器は届いた!
けれども、マウスピースがない…
ピッコロトランペットの吹き方
マウスピースを買う前に、どのようなマウスピースを買うか、ということを考える意味でも、ピッコロトランペットの吹き方に関する考察を書いておこうと思います。
「ピッコロトランペットはトランペットと基本的に演奏方法は同じ」
…という人が多いですが、俺は全く演奏方法が異なる楽器だと思っています。
だって、楽器の長さが2倍も違うんですよ?
トランペットとトロンボーンぐらい違うわけですよ。
トランペットとピッコロトランペットはマウスピースのシャンクとピストン構造が同じだけで、あとは全然違うと思います。
「ピッコロトランペットを吹いても、トランペットと大して音域変わらないよ」ってのも同じ。
トロンボーン吹きがトランペットを吹いても、トランペットの音域をきちんと吹けないのと一緒。
特に自分が違うと感じるのは、息を入れる量ですね。
みんなオーバーブローしすぎだと思います。
俺の感覚では、息を入れる量は管の容積に比例すると思っています。
例えばトランペットとフリューゲルホルンを比較すると、フリューゲルホルンの方がだいぶ管の容積が大きい。
なので、フリューゲルの方が「たっぷりとした」息を入れることを心掛けています。
そうしないと、持ち替えたのにあんまり音色変わらないね、ってことになります。
で、ピッコロトランペットでは。
容積でいえば2の3乗で8倍…とまではいかないとは思いますが、相当に容積が小さい。
こんな中で、トランペットと同じように息を入れようとしても、そりゃ楽器に適した息の量じゃないと思うんですよ。
つまり、ピッコロトランペットを吹くときには、細く少ない量の息、コンパクトな演奏が必要だと思っています。
マウスピースの形状が似ているので、アンブシュアは似ているけれども、アパチュアや息の入れ方は全く別物というイメージ。
じゃあ、どんなマウスピースを選べばいいのか…?
ピッコロトランペットのマウスピース選び
ピッコロトランペット向けというと、一般的には浅いカップを使うことが普通ですね。
もっと具体的には、ヤマハ14A4aとバック7EWがド定番でしょうか。
あと室内楽向きは小さいリム、オーケストラ向きは大きめリムというイメージがあります。
まあこれまでピッコロトランペット自体ほとんど吹いたこともないので、とりあえず標準どころでしばらく吹いてみて、って感じでしょうか。
標準の中でもどれがいいのかはよくわからないので、今回はフィーリングで行くことにします。
で、調べていると見つかるのが、シルキーの11AXと14AX。
Xバックボアと言って、ピッコロトランペット専用モデルだそうです。
調べてみると、どうやら太いバックボアらしい。
んん?
ヤマハの高音域向けマウスピースには6A4aとか14A4aといった末尾aモデルがありますが、この末尾aはバックボアが細いことを意味しています。
これとXバックボアは逆なんですね。
普通はバックボアをタイトにすることで抵抗を増して、より高い息の圧力が出せるようになることで、高音域の演奏を楽にするものだと思っていました。
俺自身ビッグバンドのリードやバンドでは14A4aを使っており、その抵抗感のおかげでパワーが掛けやすいと感じています。
でも、Xバックボアはむしろボアが広い。
この理由は、トランペットのように息を入れるようにするためなんでしょうか?
ピッコロトランペットはトランペットと比較して管体が細いために抵抗がもともと強く、バックボアを広くして抵抗感を減らそうということでしょうか?
それとも、そもそもシルキーは抵抗感が少なめな楽器なんで、マウスピースも抵抗ないのが良いと思っているんでしょうか?ヤマハにはXバックボアなんてないし…
…と思っていましたが、周りの人曰く、音程感だそうです。
マウスパイプが短い楽器はバックボアの開きを早くしないと、音程が不安定になるらしい。
ほーん。
まあでも、シルキーの楽器なんだからマウスピースもシルキー定番で合わせてもええかな。
ということで、こっちも試奏の旅に出ます。
…と思ったら、友人がマウスピースを譲ってくれることに。
ピッコロトランペットを昔持ってて今は手放したけど、マウスピースはいくつか持っていて使わないので…とのこと。
シルキーもあったので、ありがたくレンタルして吹いてみることにしました。
シルキー 11AX
大きいバックボアのためか、思ったより息がしっかり入る。
楽器屋では7A4をメインで試奏していたので、それと比べるとだいぶ息が入っていく感じです。
むしろ息をしっかり入れないときれいな音が出せない。奏者の腕の問題。
リムはかなりコンパクトな感じがします。
トランペットではド定番の11B4とかよりも7A4にフィーリングが近いですかね。
11番リムって感じがしなく、もっと小さく感じます。リム形状のせいでしょうか。
あとは音程が良いですね。やっぱりXバックボアのおかげでしょうか。幅広い音域で音程の安定感があります。
音色に関していえば、コンパクトなマウスピースなのもあって上品な感じですが、バックボアも太いためどちらかというと輝かしい寄り。
シルキー 14AX
11AXと比較して、大音量で吹けます。
吹奏感もカップが大きいだけあって、かなりオープンな感じです。
ただし、音が少し開いた感じがあります。
14A4aとはやっぱり違いますね。
音程はやっぱりよいです。やはりXバックボア優秀か…
音域に問題はないんですが、持久力に問題ありですかね。
ティルツ 7EW
バックのコピーらしいです。
大学生の時に吹いた展覧会では、バックの7EWを使ったことを思い出します。
ちなみにバック7EWは定番中の定番ということもあり、これも気になるところです。
これはまず見た目からリムが分厚いですね。大きさに関しては11AXと大差ないように感じます。
持久力はありそうですが、借りたときにはそれが分かるほど吹かなかった。11AXとの比較はできず。
ちなみに音はコンパクトな感じで割と好き。
シルキーの方が輝かしく、音抜けがいい。こっちは上品な感じ。
一方でシルキーのピッコロは楽器自体が明るさが抑えられた音を持っているので、このマウスピースの組み合わせだとピッコロの輝かしさは少し物足りない感じがあります。
あと低音の音程がシルキーのマウスピースに比べて不安定だと思いました。Xバックボアってやっぱり音程に効果があるんだ、と再認識。
バック 5C
普通のコルネット用マウスピース。
音色もピッコロトランペットは異なるG管みたいな感じになるけど、これはこれで意外とあり。
ただし、音程はよろしくない。
低音が不安定かつ高音までぶら下がる感じに。
これが解決できれば使いどころによってはありかも。
ということで、結局11AXにしました。
そもそも、まだピッコロトランペットに慣れていないので、まあこれで自分がある程度吹けるようになったときに、「そこからどうなりたいか」を考えて再度選びますかね。
俺はマウスピースに関しては、基本的には2-3年は使ってみないとその良しあしがわからないタイプです。
ともかくこれでマウスピースまでそろいました。
あとは…
スタンド探し
基本的にはトランペットとの持ち替えで使うことが多いので、スタンドに立てておくことが必須ですね。
ただし、トランペット用ではベルサイズがまったく違うため、クラリネット用のスタンドが使われることが多いようです。
ド定番はK&Mのクラリネットスタンド。ピッコロトランペット用とも書いてあります。
しかしこのP7-4、4番抜き差し管がベルよりも長い形状のため、スタンドに苦労する楽器のようです。
調べても全然出てきませんでしたが、Trumpet Herald(トランペット専門の掲示板)には少し書いてありました。
そこに書かれていた限りで、解決方法は下記の4種類があるようです。
【第1候補】
高さ:156mm、重量:135g
○コンパクト、軽い。折り畳みも可。
×スタンドが小さすぎてベルが奥まで入りすぎないかが心配。その場合4番管が床にぶつかるかも?
【第2候補】
下記3点の組み合わせ
K&M/ 15224 クラリネット・ピッコロトランペット用ペグ
K&M / 17700B(各種管楽器ペグ用レッグ)
K&M 15281(ペグアダプター)
○確実に高さがあって4番管が接地することはない。家にクラリネット用のスタンドがあるので流用できる。
×コンパクトさに欠ける。
【第3候補】
いわゆるSpyderスタンドというやつです。
ただし、これは長すぎるらしく、P7-4向けではセンターシャフトを切り取る必要があるらしい。
○軽い
×加工がめんどい
【第4候補】
高い位置で楽器を保持しようと思うとハーキュレスのスタンドが出てきますね。
ただし、これもクラリネット用を買う必要があり、なおかつクラリネットだけで背の高いスタンドが販売されていないので、トランペット用スタンド+クラリネット用ペグの組み合わせが必要です。
○昔間違えて購入したフルートペグが一つ家に余ってるから、それを使える。安定感。
×たたんでもでかくて、持ち運びがめんどくさそう。むしろ楽器より大きい。
試行錯誤
結局第一候補のK&M エスクラスタンドがいちばん良かったです。
ちょっと足が短いので、蹴られたりしたときに倒れやすい…かも?
まあ普通に使う分には問題ありません。
縁のフェルトの部分でベルを支持しているような感じです。
思った通りちゃんと高さがあるため、4番管をこれぐらい伸ばしても接地することはありません。
たたむとコンパクトになるし、これが一番良いですね。
スパイダーは...やっぱりそのままだと長そう。
パッと刺すと立つんですが...
やっぱベルでは保持してないですね。
ちなみにもちろんK&Mのクラリネットスタンドは高さがあわず。
4番管が地面についちゃうので使えません。
しかも保持部分も少し太くて、ちょっときつめ。
やはりエスクラ用スタンドが一番です!
みんなはどんなの使ってるのかなあ。
演奏編
ピッコロトランペットで吹いてみたい曲、これから練習しようと思っている曲を書き留めておこうと思います。
ピッコロトランペットを持ったら吹いてみたい曲って意外とたくさんあるんですよねー
今までずっと聴いてきているけど、楽器がなくて(思うように)吹けない曲ばかり…
バッハ ブランデンブルク協奏曲第2番
トランペット吹きなら知らない人はいない超有名曲ですね。
タンギングが大変そうで、高音でたくさん動くこの感じは、まさにピッコロトランペット向け、という曲です。
リコーダーとチェンバロと合わせる曲なんで、やる機会があるとは思いませんが、練習したい曲。
最高音ハイF。
そしてこういうのはいつかナチュラル管でも吹いてみたいものです。
そのためにこっそりB管でも練習しておく。
テレマン トランペット協奏曲
バロックのピッコロトランペット(ナチュラル管)の協奏曲なら一番有名なんじゃないでしょうか?
バロックのテレマン、古典のハイドンという印象。(ロマン派以降ならアルチュニアン??)
特に1楽章アダージョは、ピッコロトランペットの課題練習曲としては再有名なんじゃないでしょうか。しらんけど。
最高音ハイE。
タルティーニ トランペット協奏曲
ピッコロトランペットの協奏曲ではテレマンと押しも押されぬメジャー曲。
最高音ハイD。
バッハ バディネリ
エムパイヤブラスがやっていてすごく好きだった。これはカナディアンブラスですけど(笑)
ピッコロトランペットを買ったのは、こういう曲を軽やかに吹くためといっても過言ではない。
キラキラ感があるけど短調ってのがいいですね。
ピッコロの曲で短調ってあまりみない気がします。
最高音ハイD。
ハイドン(弟) トランペット協奏曲
最高音ハイA(!)
フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの実弟であるミヒャエル・ハイドンの協奏曲。
Michael Haydn: Trumpet Concerto (Maurice André, trumpet) I
Wikipediaにも「当時の作品に例を見ない実音3点Aを要求されることで知られる」との注釈が。
兄ハイドンはあんなにいいコンチェルトを書くのに、弟はなんでこんな曲を…
いや、いい曲なんですけどね、音域がね。
モーリスアンドレでさえヒョロヒョロした音になってしまっている…
ピッコロでもしんどい音域ですが、ハイノートヒッター(笑)としてマスターしておきたいところ。
ライヒェ ファンファーレ
曲のタイトルはあるのかないのかよくわかりませんが、アップブラーゼン(Abblasen)とも言われます。
Wynton Marsalis recording "Abblasen" for CBS Sunday Morning
海外ではCBSニュースサンデーモーニングのテーマとして知られるようです。
短くてコピーしやすい。なんならC管でいけるか(笑)
でもみんなピッコロで吹いているので、おさえておきたいところ。最高音ハイD。
モーツァルト 魔笛より夜の女王のアリア
W. A. Mozart - Queen of the Night (Magic Flute)
メロディーが有名なんで一度は吹きたい曲。
最高音ハイF。
ビートルズ ペニーレイン
クラシックではないですが、ピッコロトランペットが世界で一番有名な曲ではないでしょうか。
これもA管で吹くのが普通ですね。
カナディアンブラスのこれもよき。最高音ハイE
Penny Lane - Canadian Brass LIVE at UNT - 2019
バッハ 協奏曲ニ長調 BWV972 ヴィヴァルディの協奏曲に基づく協奏曲
バッハオリジナルじゃなくてヴィヴァルディの曲をバッハがアレンジしてます。
原曲は聞いたことないし、こっちの方が有名なんじゃないでしょうか。
ピッコロトランペット2本の曲。いつかアンサンブルでやってみたいなあ。一緒にやってくれる人いるかな(笑)
最高音ハイE。
Bach BWV 972 after Vivaldi Violin Concerto RV 230