ロータリートランペット購入記1 ~探索・決断編~
楽器が欲しい!
最近やったオーケストラでは、周りがロータリートランペットを吹いてるんですよね。
突き抜けるような音よりも、オーケストラを包み込むようなトランペットの音。
以前日記で書いたのは「オーケストラで突き抜けるようなサウンドが欲しい!」ということでC管トランペットを買ったことですが、最近は「曲によっては包み込むようなサウンドも出したい…」と思うようになりました。
周りで吹いているのを聞くと、その魅力がどんどんわかってきます。ああ、こうやって音を出すと、オーケストラとこう混ざるのね。ああ、これもありだなあ、と。
ぐんぐんロータリートランペットが欲しくなってきます。(ピストンC管もまだそんなに吹いてないのに…)
よく言われるのは、ドイツ・オーストリアが作曲者の時はロータリートランペットの音色を想定して書かれていることが多い、とのことです。そんな曲めっちゃ多いじゃん。
なので、そういう曲をやるときはロータリートランペットを使う人は多い(らしい)。
それから、ドイツ・オーストリアではプロからアマチュアまで基本的にロータリーを使うとのこと。
ちなみにオケ界隈では、ピストンのトランペットを縦、ロータリートランペットを横と呼ぶことが多いです。構え方の差です。通っぽい。
で最近は、ロータリートランペットが必要だなあ、と思う出来事もあったことで、物欲がムクムクと膨らんできてたくさん調べて探しました。
メーカーが多すぎる…
探そうとしました…が。
全然バックやヤマハみたいな「みんな使ってるからとりあえずこれ買っとけ!」みたいなメーカーがないんですよね。
工房で職人さんがコツコツ作っているような感じ。
だから、どこのメーカーの楽器を買うか、凄く悩みます。
そんな中でも調べていくと、レヒナーとシャーゲルというのが2大工房のようなイメージを持ちました(賛否あるとは思いますが…)
縦トランペットでいうシルキーとバックみたいな感じでしょうか?
数十年前はヘッケル・モンケという2大メーカーがあったようですが、今はほとんど売られてない。その辺は職人の引退とかそんなのでコロコロ変わるのかもしれません。調べたけどよくわからんかった。
後はメジャーどころでヴァイマン、タイン、ガンター、シェルツァー、ウェーバー、ヴィレンベルグ、ドーヴィッツ、チェルベニー…出てくる出てくる。もちろんヤマハも。
周りはリコキューン(ホルンの方が有名ですかね)を使っている人が多いです。これもとってもメジャーどころ。最近人気らしい。
楽器がドイツで賞を取ったとかなんとか。
価格もレヒナー・シャーゲルに比べれば少しお買い得。
ちなみにロータリートランペットって基本的にめちゃくちゃ高いんですよ。
ピストンはバックとかヤマハが30-40万円でプロレベルの楽器が買えますが(俺が買った20年前は180MLが20万以下でしたが)、ロータリーは50-100万円ぐらい。高すぎる。とにかく部品が多いのと、工房が小さいため大量生産しないからっぽい。
これがまた悩みを加速させますね。大きい買い物こわい。
ロータリートランペットを選ぶにあたっては、まずタイプを考えるのがいいのかと思います。
大まかに分けて、ふたつのタイプに分かれます。
華やかで明るいウィーンタイプ。ベルが小さい。
太く重厚なベルリンタイプ。ベルがでかい。
最近は中間ぐらいが流行っているらしい。
ベルリンタイプのスモールベル、とか、ドレスデンモデル、とか、名称は様々ですが、そういう感じが人気だそう。
いろんな人に聞いた感じだと、ウィーンタイプは音がコンパクトで室内楽むき、ベルリンタイプは音が太く大きいのでオーケストラむきのような感じ。オーケストラにおいては古典だとウィーンが向いててロマン派だとベルリンとも。
近年では、ベルが大きいベルリンタイプは音が暗くて輪郭が曖昧になりやすいという認識のもと、中間が人気という話だったけど、ソースによっては、関東はベルリンで関西はウィーンが人気、とかもありました(笑)
ところでウィーンとベルリンってクラシック音楽の二大巨頭っぽいですけど結構違いますよね。京都と東京みたいな感じ。
ウィーンフィルとベルリンフィルを聞き比べてもすぐにわかります。
でもトランペット好きはだいたいベルリンフィル派かと思います。金管アツいですよねー
(個人的にはシカゴ響万歳!派でしたが…)
楽器もまさにそんな感じで。
ちなみに、自分が2大メーカーと感じたレヒナーとシャーゲルは、
オーストリア、ウィーンはレヒナー(Lechner)。
ドイツ、ベルリンはシャーゲル(Schagerl)。
という感じです。シャーゲルはウィーンモデルもあるけどね。どっちもオーストリア製だけどね。
試奏の旅へ
包み込むような音が欲しい、ウィーンフィルよりベルリンフィルが好き。
ということで、ベルリンモデルか、ウィーンとベルリンの間ぐらいのモデル、を探すことにしました。
2大メーカー(?)でいうなら、レヒナーよりシャーゲル。
ベルリンフィルの多くの首席奏者が使っていて、憧れます。元ウィーンフィルのハンスガンシュが使っているのでも有名。ネームバリューがあってミーハーホイホイ。ただし高い…
ということで、様々な試奏をしてみました。
ただしピストンと比べて数が少ないです。そもそも置いてない楽器屋もあるし、楽器屋ごとに置いてあるメーカーも全然違うし…大変でした。
基準はここ
まずは知り合いのリコキューンT053。
https://www.ricco-kuehn.de/1/instruments/trumpets/c-trumpets/
その音ばっかり聞いていたので、イメージはこれがスタンダードになってます。
吹いたのはB管ベル130mmのドレスデンモデルとC管ベル132mmのベルリンモデルです。
ちなみにベルが大きいのがベルリンモデルで、小さいのがドレスデンモデルだそう。ドレスデンがいわゆる中庸なタイプですかね。
B管は一度演奏会で借りてブラームスを吹きました。このときに音色が凄くハマる感じがして、楽器が欲しくなっていくわけですが。とても太くて豊かな「これがロータリーか!」って音でした。
他の多くのロータリートランペットはピストンのマウスピースがうまく刺さらない(シャンクが違う)のですが、リコキューンはバックのマウスピースが刺さる設計になっており、自分のバックのマウスピースで吹くことができました。実際に1 1/2Cで吹くことが想定されているらしい。
最初は2Cで吹いてましたが、でも途中からヤマハの15E4に変えて吹きました。ロータリー用のマウスピースだと全然違いますね。ピストン用のマウスピースでは楽器の音色を引き出せていないと思います。
ロータリー用のマウスピースを使ったときは包み込むような音色で、ティンパニーと凄くよくアンサンプル出来ます。
音程も悪いところがなく、いいなあと思っています。
これをベースに、色々吹き比べました。
ヤマハ
ふらっと銀座のヤマハに行って、YTR-938FFMSを試奏。
B管で、ゴールドブラスとイエローブラスの楽器を吹きました。
この楽器はベルが大きいベルリン系のモデルだと思います。
音が暗くなりすぎないようにということで、黄ベル製モデルも準備しているのかな?
世のロータリートランペットはそのほとんどが赤ベルだと思います。黄ベルは珍しい。
やっぱり自分にはちょっと明るくて、俺は暗い音色を求めてるんだなあ、と再認識しました。
赤ベルの方はいい楽器だと思いました。音程いいし音色もそれっぽい。
でもなあ、良くも悪くもヤマハって言うんですかね。
クセが少なすぎるというか、優等生過ぎるというか。
まさに楽器界のトヨタ、色気が足りない感じがするんですよねー
これよりキューンの方が良いなあ。値段も60万ぐらいで変わらないし。
レヒナー
それから知り合いにレヒナーC管を借りて吹いてみました。
とにかくお上品。ffまで吹き込んでいってもバリッとした音にならず、しなやかさがある。
素晴らしい楽器だとは思いますが、暗さはあまりない。音もコンパクトにまとまっていく感じ。
ウィーンフィルってこんな感じだよなあ、とは思いつつ、自分のイメージするロータリーを用いたオーケストラのサウンドではないことに気付く。
ソロとかはいいと思うけどね。
いや、めっちゃいい楽器でしたよ。好みの問題ね。
新品で買うと100万近くするっぽい。恐ろしい子…!
リコキューン
新大久保の某楽器店で試奏。
130mmベルのドレスデンモデルと140mmベルのベルリンモデルを吹き比べ。どっちもB管。
130mmは借りて吹いたのと同じで、やはり吹いた中ではかなり自分のイメージに近い音。
だったのですが、140mmベルのベルリンモデルはもっともっと暗く、全体に広がる音でした。
これを吹いた後だと、130mmの音は大分コンパクトに感じます。
ベルリンモデルは少しダーク過ぎて、ホールで音が飛ぶかどうかが心配ではありますが、かなりキャパシティも大きい楽器で、吹き込めばホールを包み込めそうな太い音でした。
ベルリンモデルが第一候補です。
60万円ぐらい。他のを見るとお買い得っぽいけど、それでもやはり高い…
でもコスパで考えるとこれかなあ…
シャーゲル
シャーゲルはウィーン、ベルリン(ヘビー)、ハンスガンシュ(ヘビー)と凄くたくさんのモデルがあります。
https://schagerl.com/meisterinstrumente/instrumente/drehventile/
ハンスガンシュモデルはスペックだけ見るとしっかり系でベルリンに近い。むしろベルリンのMLボアに対してガンシュはLボアなので、ウィーン系とは違って重めの楽器にしてるけどボアを広げて明るい音が出るようにしてるのかな?という印象です。
自分の中では、ベルリンヘビーが第一候補。こちらも楽器屋で試奏しました。
ベルリンB管GP:全体的にかなりしっとりとした音色。暗いというほどではないが少し明るい。中音域のロータリーらしい柔らかい音色と、高音域は明るい音色。高音は出しやすいが輝かしくなりすぎないところも良い。フルキー付き主管抜差管にすると音が落ち着く(5万ぐらい上がるが)。
ベルリンヘビー C管GP:明るくクリアな音色の中にしっとり感がある。暗さはないが包み込むような音色はやはりロータリーのそれ。高音域の出しやすさがすごい。C管は少し音が軽い感じがする。
シャーゲルはメーカー的な憧れもあるし、ベルリンモデルは音も暗めだが高音域に華やかさもあっていい楽器だと思いました。吹いてないけど、やっぱりB管のヘビーにすると明るさが更に抑えられていいんじゃないかな、という感じ。しかしいずれも80万ぐらい…高い…
その他吹いた楽器
ドーヴィッツ:キューンのドレスデンモデルに似てる。それよりは少し明るいサウンドと思ったけど、人によって変わるレベル。
ヴォトゥルーバ:中低音から高音までクリアな音。ウィーン系で華やかな音色。
オーバーラオホ:キューンと同じぐらいの価格帯でお値打ち感はある。楽器の作りは良いと思うが明るい鳴りで第一印象からこれじゃない感。
チェルベニー:20万ぐらいで安い。いわゆるスチューデントモデル。音色の奥行きに欠ける。音程はそこそこ。とりあえずロータリー持っておきたい…ぐらい用と思われる。
B管かC管か
これも実はすごく悩んだ事柄。
国内外のプロオケはほぼC管。ドイツでは一時期オールB管の時代もあったらしいが。
アマチュアも基本的にはオーケストラで使うので、日本で流通しているのはC管がほとんど。
一方で海外のアマチュアはB管使う人の方が多いらしい。日本ほどこだわりがないとかなんとか。
俺が使うのはオケだしやっぱりC管…?
でも吹いてみた感じ、C管は明るく華やかな音が出がちで、B管は太く暗い音色が出る。B管が凄く好み。
特に俺は普通に吹くと非常に明るい音色が出るタイプなので、C管を吹くと明るくなりすぎてしまう。軽くきらびやか過ぎてロータリーっぽくないような気が。ロータリーを吹くならB管の太くて暗い音でも、俺の本来の明るいサウンドと中和してむしろ周りのC管に音色は併せられるのでは?
でも周りがC管だと音程合わせるのが難しくなったりするかもしれない…
それから音色に加えて、普段吹奏楽やらジャズやらバンドでB管を吹く機会も多く、慣れたB管の方が吹きやすいと思う。シャープ系の調も苦ではないし、in Cとかin Aの読み替えとかそんなに苦じゃない。かつ、正直高い音は割と自身があるので、高い音を出しやすくするためにC管っていうのも違うな、と思いました。
ということで、やはり買うならB管を買おう!と決意。
キューン、シャーゲルあたりの重めのB管かな…?
どうやって買う?
まずは予算決めです。
出来ればピストンと同じぐらいの、30-40万円ぐらいで買いたいな、って思いますよね。
でもやっぱいいのは60万円以上するし、いい方法はないかと考えます。
まず新品で買わない、というのが候補にはいります。
中古での購入を検討しました。
ロータリートランペットは国内の流通量が少ないからか、はたまたコミュニティが狭いためか、中古市場というよりも、個人間の譲り合いもありそうです。
楽器屋の中古もそうですが、知り合いの知り合い、ぐらいまで伝手を伸ばせば、かなり安く手に入る可能性がありそう、というのが分かりました。
とくに海外のプロの放出品とかが結構日本に入ってきているようで、その辺を紹介してもらう、というのを考えました。
しかし、中古は求めるメーカーやモデルがすぐに出てくるとは限らないし、場合によってはへたってたり変な癖がついてたり、という可能性もあり少し気になります。
出来れば新品で買いたいけど、値段がね…
となると次に考えるのは個人輸入です。
ロータリートランペットは、全体的に本国の定価に比べて国内の定価がとても高い、という問題があります。
例えばシャーゲルは本国だとベルリンヘビーモデルの定価4,140ユーロ。日本では定価855,300円。リコキューンはT053が定価3,860ユーロ。日本では定価743,040円。日本だと実売価格は2割引きぐらいですかね。それでも高い。
4000ユーロなら出せるんじゃね?とおもい、メーカーからダイレクトに買うことを考えました。しかしメーカーに頼んでも、日本の代理店があるから、と直接売買を断られるケースがほとんど、ということです。
そこでちょっと抜け道を探しました。
海外の楽器屋さんから安く買えるんじゃないか?
ネットで検索すると、いくつか楽器屋さんが出てきました。ドイツ語で。
ほとんどの店はロータリーなんて受注生産なのか在庫なしでしたが、いくつか在庫があるところを発見。
その中の店にメールを送って確認すると、日本に配送してくれるところを見つけました(ほとんどはEU圏内まででしたが)。
ちなみにドイツの消費税は19%ですが、日本に持ってくる場合はドイツの消費税は免税されます。
となると、凄い安くなるんですよ。ネットの売価(ほぼ定価だけど)の19%オフ!
キューンなら3250ユーロ、送料が50ユーロ。
シャーゲルでさえ3500ユーロ…
え、安くね…!?
ちなみに日本に入ってくるときに、関税と消費税が(商品価格×0.6+関税)×8%でかかります。
楽器は関税がかからないので、日本に入ってくるときは0.6掛けの消費税のみ。
キューン40万??憧れのシャーゲルでさえ45万以下なの??
ということで、新品のシャーゲル ベルリンヘビーが第一候補に急浮上。
リコキューンのT053Cベルリンモデルが第二候補。
続いて紹介で中古を手に入れる、という優先順位に。
不安があるとすれば、やはり楽器の個体差。
ピストンだとバックなんかは個体差が大きく、あたりを掴めないなら安定したヤマハを買った方がいいと思うぐらいブレます。
試奏せずに買う、というのはなかなかリスキーですよね。
とくにシャーゲルのベルリンヘビーは同モデルの試奏さえできてないし…(ヘビーじゃない方のGPは試奏した)
でも詳しい人に聞くと、シャーゲルの個体差はどうも比較的小さいらしい、という情報が。
それにロータリートランペットなんかは受注生産も多いので、新品購入時に複数本から選定しないことも多そう。
加えてこれだけ安く買えたら、よしんば合わない楽器を買ってしまったら売って買い直せばよいのでは…?
ということで、リスク承知で海外から購入です。
ちなみにメールしている感じは店員さんはすごく親切で良い人なので、某アジアの通販のように「届かない!」とかのトラブルリスクはなさそう。
ただしその店は購入にカードが使えないっぽく、銀行の海外送金が必要とのこと。これが面倒くさいし、手数料が数千円ぐらいと高かった。でも国内で買うのに比べれば、全く大したことはない。
メールで注文して、海外送金して、首を長くして待ちます。
待ちきれん…何度もトラッキング情報を確認してしまいますね。
楽器が来たらまたレビューします!
つづき